マンション修繕向け融資が過去最高を記録

建築資材や人件費の上昇が続いており、賃貸物件の大規模修繕に以前よりも多くの費用がかかるようになっています。

このような環境下で、「想定していた修繕費では足りない」「修繕すると手元資金が大きく減ってしまう」と悩むオーナー様も増えているのではないでしょうか。

とはいえ、必要な修繕を先送りすれば、建物の劣化が進み、かえって多額の費用がかかる可能性があります。

今回は、大規模修繕費が高騰するなかで、どのように負担を抑えていけばよいのか考えてみます。

大規模修繕費の高騰を象徴するようなデータがあります。

日本経済新聞によると、住宅金融支援機構が提供する、マンション共用部分の修繕工事などに使える「マンションすまい・る融資」の2025年度の融資額は、受理ベースで約406億円となりました。

前年度から58%増え、過去最高を更新しています。

10年前と比較すると、件数は約2.4倍、融資額は4倍弱まで増えています。

この融資制度は、マンションの管理組合などが共用部分のリフォーム工事に利用できるものです。

そのため、一棟の賃貸アパートや賃貸マンションを所有するオーナー様向けの制度ではありません。

ただ、修繕費を自己資金や積立金だけで賄うことが難しくなっている状況を示す一つの材料といえるでしょう。

賃貸経営でも、修繕費の増加によって手元資金を取り崩したり、金融機関からの借り入れを検討したりするケースは、今後増えていく可能性があります。

大規模修繕は安定経営を支える重要な取り組み

コストの負担が重くなると、大規模修繕を「もう少し先に延ばせないか」と考えたくなるものです。

しかし、必要な修繕まで先送りするのはおすすめできません。

なぜなら、賃貸経営にとって、大規模修繕は安定経営を支える重要な取り組みだからです。

外壁のひび割れや防水層の劣化などを放置すると、雨水が建物内部まで入り込み、構造部分の補修が必要になることがあります。

早めに対応していれば小規模な工事で済んだものが、結果として大きな工事になるケースもあります。

また、外観や共用部の劣化は内見時の印象にも影響します。

定期的に大規模修繕を行い、建物を良好な状態に保つことは、入居者満足度の維持に加え、空室率や家賃下落を抑えるうえでも大切です。

さらに、建物の寿命を延ばし、長期的な修繕費を抑えることにもつながります。

一方で、修繕費を借り入れに頼り過ぎると、返済負担が増え、金利上昇の影響を受けやすくなります。

そこで考えたいのが、修繕の先送りではなく、時期や内容を見直して「大規模修繕を最適化する」考え方です。

対策1:大規模修繕の周期を見直す

まず検討したいのが、大規模修繕の周期です。

大規模修繕は、「12年周期」というイメージが強い方も多いかもしれません。

しかし、国土交通省が2024年6月に改訂した「長期修繕計画作成ガイドライン」では、大規模修繕工事の周期は、一般的に「12~15年程度」としています。

つまり、必ずしも12年目に大規模修繕工事を行う必要はありません。

さらに同ガイドラインでは、長期修繕計画で設定する工事の内容や時期は「おおよその目安」としています。

実際の工事内容や時期は、建物の状態や過去の修繕履歴などを調査・診断したうえで判断しましょう。

例えば、「12年目だから」と一律に修繕するのではなく、専門家に建物の状態を確認してもらい、問題がなければ時期を延ばす方法もあります。

修繕周期を適正化することは、長期的なコスト削減にもつながります。

※同ガイドラインは主に分譲マンションを対象としたものですが、ここでは修繕周期を検討する際の参考として紹介しています。

対策2:部位ごとに修繕時期を判断する

建物全体を同じタイミングで修繕する必要があるとも限りません。

前述の国土交通省ガイドラインでも、修繕周期は部位ごとに細かく分けられています。

例えば、屋上防水の補修や修繕は12~15年、撤去して新設する場合は24~30年が目安です。

外壁塗装は、塗り替えであれば12~15年、既存塗膜を除去して塗装する場合は24~30年が目安とされています。

また、鉄部塗装は5~7年が目安です。

このように、建物のすべてが同じスピードで劣化するわけではありません。

日射や雨風を強く受ける場所は劣化が早い一方、比較的傷みの少ない場所もあります。

例えば、「屋上は傷みが進んでいるので12年目に修繕するが、外壁は状態がよいため15年目まで延ばす」といった判断も考えられます。

すべてを一度に工事するのではなく、劣化状況を確認しながら必要な部位を見極めることがポイントです。

ただし、工事を分けすぎると足場代などが重なり、かえって割高になることもあります。

まとめる工事と分ける工事を見極めることが大切です。

対策3:長寿命化につながる材料や工法を選ぶ

もう一つ考えたいのが、材料や工法です。

大規模修繕では、「工事費をいくら安くできるか」に目が向きがちです。

しかし、安さだけで選ぶと、かえってトータルコストが増えることがあります。

分かりやすい例が外壁塗料です。

一般的な耐用年数の目安と特徴は、次のとおりです。

・アクリル塗料 5~8年程度。

価格は抑えやすいものの耐久性は低め。

・シリコン塗料 10~15年程度。

コストと耐久性のバランスに優れる。

・フッ素塗料 15~20年程度。

耐候性が高く、長持ちしやすい。

・無機系塗料 製品によって耐用年数は異なる。

高耐候の商品が多い。

例えば、初期費用が多少高くてもフッ素塗料を採用し、次回の塗り替えまでの期間を延ばせれば、長期的には足場代や施工費を抑えられる可能性があります。

外壁を長期的に維持したい場合、「外壁カバー工法」の選択肢もあるでしょう。

これは、既存の外壁を撤去せず、その上から金属サイディングなどの新しい外壁材を重ねる工法です。

外観を大きく変えられ、材料や工法によっては断熱性の向上も期待できます。

ただし、建物状況によっては採用できない場合もあります。

修繕費が高騰している今は、過去の修繕計画をそのまま続けるのではなく内容や時期を見直すことが大切です。

必要な修繕は行いつつ、修繕周期や工事範囲、材料や工法を工夫することで、長期的な負担を抑えやすくなります。

賃貸物件の大規模修繕やリフォームでお悩みのオーナー様は、ぜひ当社へご相談ください。

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安土 珠里
安土 珠里